はじめに


Hammer editor(ハンマーエディター)とは、ゲーム上のマップ(フィールド)を作成するツールです。
マップ上に点在する様々なオブジェクトや建物、背景を作成出来るだけでなく、このエディターの最大の役割となるであろうゲーム中に起きるイベントやシーケンス、ゲームバランスの調整といった、ゲーム全体に関る部分まで作成する事が出来ます。
こうしたツールの事を巷ではレベルデザインツールと呼んでいます。

一見した所では、一般の人が簡単にゲームを作る気分が味わえる「ツクールシリーズ」のような印象を受けるかもしれません。しかし海外のゲームメーカーが実際にゲームを作る際にこうしたレベルデザインツールを使ってゲームを制作している事からも分かるように、非常に本格的なツールであり、ゲーム制作においてほぼ中心に据えてあるツールと考えて間違いありません。とにかくこれがなければゲーム制作は不可能という位に重要なツールなのです。

驚くべきことに、こうしたレベルデザインツールは基本的に無償で配布されています。もっとも、大概はゲームにバンドルされている事が多いため、最低でも対応するゲームを購入しなければならないので厳密には無料という訳ではないでしょうが、ツール自体は無料で手に入ります。勿論、機能制限などなくユーザーはこのツールを使って好きなようにゲームを作成する事が可能です。とはいえ、全く新しいゲームを作成するとなると、ゲームプログラミングの知識が必要になったりと、到底素人には手に負えないレベルであり、現実的では無いように思えます。


しかし、レベルデザインツールを利用することにより、対応したゲームの素材を利用してゲームを作成する事が可能になります。これならゲームがツールに対応済みなのでプログラムをいじる必要はほとんどありません。ゲームに登場するテクスチャやキャラクターモデル、シーケンス等を拝借し、新しい追加マップや新規ゲームを作成する事が可能です。これならツールの使い方を覚えるだけでゲームが作れててしまうので、素人にも手に負えるレベルな訳です。こういった既存の物を改造して作られたゲームの事をModと呼んでいます。
この辺の概念だけを要約すれば、ツクールシリーズと良く似ていると言えるでしょう。しかし、これは初心者の入り口でしかなく、これを使いこなすベテラン達になると、オリジナルのプログラムコードやプラグイン、キャラクターモデル、テクスチャ等を自作し、さらに高度なModをレベルデザインツールを中心にして本格的に作成しているのです。前述したように、プロの人達もこれを使ってゲームを作成しているので、ここで培ったゲーム作りのノウハウは、そのままプロになっても引き継げるため、海外では趣味の一環ではなく、ゲームデザイナーになるための自分のプレゼンテーションも兼ねている事が多いのです。そのため、レベルデザインツールで優秀なゲームを作った作者がその腕を認められて、ゲーム会社にスカウトされる、なんて事は日常茶飯事に起きています。

残念ながら日本国内では、レベルデザインツールを中心に据えたゲーム作りが全く一般化していないためにそのようなケースは希です。そもそも、日本の感覚ではゲーム制作に使用したツールを惜しげもなくゲームのオマケとして配布してしまうなど、あり得ないでしょう。しかし、プログラムの知識が無くてもゲームが作れてしまうツールであるという事実は変りません。



そのため、世界で最も遊ばれているゲームのひとつ「Counter-strike」シリーズは、現在もなおソース版(CS:S)が出て人気を博していますが、プレイしているユーザーの中には、このレベルデザインツールを使ってオリジナルのカスタムマップを作成して公開している人達がたくさんいます。彼らの殆どはゲームプログラミングの知識など持ってはいません。レベルデザインツールをうまく使いこなしているだけ、それだけでゲームの追加マップが作れるのです。


さて、レベルデザインツールの概要を理解してもらったところで、このサイトで解説するハンマーエディターについて話を進めましょう。
現在、このハンマーエディターは、Valve社が提供しているソースエンジンを使用したゲーム(Half-life2シリーズ、CS:Sチームフォートレス2等)に特化したツールになっており、実際にValveのスタッフもこのツールを使ってゲームを制作しています。



そのため、ユーザーはハンマーエディターを使ってこれらのゲームの追加マップやカスタムマップ、全く違う別のゲーム等を作る事が出来ます。
特にソースエンジンのゲームは様々な機能があり、かなり自由度が高いため本当にアイデア次第でオリジナリティあふれるゲームをクリエイトする事が可能です。
また、ソースエンジンはHDR(ハイダイナミックレンダリング)に対応しており、美しいライティング効果を持ったゲームを簡単に作成出来ます。
あるいは、その高度なグラフィックを利用して、ゲーム以外にCAD的な使用法もあるかもしれません。
ツール自体も非常に洗練されており、直感的に作る事が出来るため、すぐに仕組みを理解出来る点でも評価が高く、長きに渡ってレベルデザインツールの代名詞として使われて来た経緯があります。
 

しかしハンマーエディターは旧Half-lifeエンジンに対応していた頃に比べ、色々な点で複雑化してしまったきらいはあります。自由度が高い分、少々初心者には難易度が高めなになってしまった感は否めません。加えてこれらのツールに関しての日本語によるドキュメントやチュートリアルは殆どない状態であり、これではツールをマスターするだけでも一苦労です。
そこでハンマーエディターの基本的な使い方やヒントなどをできるだけ詳しく紹介していこうという名目でここは作られました。

Text by K.S.(Koumei Satou)
 

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